実践トレーニング | 近日、DeepSeekのAIモデルが世界的に話題となっており、「DeepSeek効果」によって、世界の投資家が中国資産の大きな可能性を改めて見直しています。
逆張り投資家として知られるアンソニー・ボルトン氏は、「私たちは中国の新たな強気市場の入口に差し掛かっている」と述べています。ウォール街の大手投資銀行も相次いで中国株市場に対して前向きな見方を示し、資金が驚異的なスピードでこの活気ある市場に流れ込んでいます。
本記事では、この現象の背後にある投資ロジックを詳しく分析し、DeepSeekがなぜ中国株市場の魅力を引き出す新たな原動力になっているのかを解説します。
DeepSeek効果 : 中国株市場が世界の注目を集める
DeepSeek AIモデルが1月末に発表され、世界的な注目を集めました。その後、多くの資金が中国株市場に流入し、特にDeepSeekが牽引するテクノロジー関連の株式が急騰しています。春節明けの取引開始後、CICCのデータによると、2月6日から2月12日の間に中国本土株市場へのパッシブ資金流入が4.3億ドルに達し、前週の1.3億ドルから大幅に増加しました。さらに、香港市場やADR（米国預託証券）への海外資金流入も2.8億ドルに増加し、パッシブ資金流入は前週の2.5億ドルから倍増して5.4億ドルに達しました。
また、DeepSeekの画期的な進展が世界市場に影響を与える中、モルガン スタンレー、ゴールドマン サックス、UBS（スイス銀行）、ドイツ銀行、バンク オブ アメリカ、ブラックロックなどの多くの海外金融機関が、中国資産およびA株市場に対して前向きな見解に変更しました。
- モルガン スタンレーはこれまで中国株に対して慎重な姿勢を取っていましたが、最近では、MSCIの2025年末の目標株価を63から77に引き上げ、中国株市場のさらなる上昇に対する自信を表明しました。
- ゴールドマン サックスは、DeepSeekが中国のテクノロジー分野の評価を変え、AI成長への前向きな期待を高めたと指摘し、MSCIと滬深300の目標株価をそれぞれ85と4700に引き上げました。
- バンク オブ アメリカは、DeepSeekを2014年のアリババ上場に匹敵する重要な転換点と見なし、長期的な国際資本が中国市場に戻る可能性を指摘しました。中国株市場は「短期的な取引対象」から「長期的な投資対象」へ変わりつつあります。
さらに、フィデリティ インターナショナルの元会長アンソニー・ボルトン氏は、中国市場は世界市場と比較して現在低迷しており、逆張り投資の絶好の機会であると述べました。同氏は、現在の米国株の評価が非常に高く、AIの影響が米国の数社の大手企業に集中しており、ITバブルと類似していると指摘しました。また、米国株の上昇はトランプ大統領の就任時にすでにピークに達しており、関税の正式導入が市場の転換点となる可能性があるとも述べています。
実践トレーニング | 米国株の衰退 : バブル崩壊の兆候か？
アンソニー・ボルトン氏の米国株に対する懸念に、果たして根拠はあるのでしょうか？以下の指標を基に分析しました：
- CBOE S&P 500分散指数（DSPX）
DSPXは過去1年間にわたって上昇を続け、1月29日には2022年5月以来の最高水準に達しました。この上昇は、米国株市場の「分散化」が進行していることを示しています。
もしこの個別銘柄の分散化が終息すれば、S&P500は大きな影響を受ける可能性があります。なぜなら、すべての銘柄が同じ方向に動き始めると、個別銘柄の値動きによる相殺効果がなくなり、指数の安定性が保てなくなるからです。。
- 周期調整後PER（CAPE）
現在、CAPEは38倍に達しており、歴史的平均の18倍を大きく上回っています。これは、米国株市場全体の評価が非常に高いことを示しており、今後、市場リスクや調整圧力が増す可能性があることを意味しています。
- 投資機関のポートフォリオの変化
米国証券取引委員会（SEC）のデータによると、2024年第4四半期末時点で、米国のハイテク株は主要投資機関のコア資産でした。しかし、機関投資家の投資戦略には明確な分岐が見られ、高値で利益を確定する動きが活発化する一方、一部のヘッジファンドは大量に中国株を購入しました。
例えば、世界最大級のヘッジファンドであるブリッジウォーター アソシエイツは、2024年第4四半期に米国の主要ハイテク企業（Google、NVIDIA、Meta、Microsoft、Apple、Amazon）の株式を大幅に削減しました。なかでも、Appleは40%、NVIDIAは26%、Amazonは35%と大きく減少しました。英国の長年にわたる資産運用大手であるバイリー ギフォードも同時期にハイテク株を大規模に売却しました。特に、NVIDIAに対しては1,060万株以上を売却し、売却比率は16.7%に達しました。
ブリッジウォーターの創設者であるレイ・ダリオ氏は、現在のAI関連資産の高価格と高金利環境が、1998年および1999年のITバブルと類似しており、市場リスクが高まっていると警告しています。
実践トレーニング | 中国資産の台頭 : 割安評価なハイテク株に注目
米国株の先行きが不安定な中、中国株市場、特に「割安感」のある中国テクノロジー株は、DeepSeekの影響で特に注目されています。
過去2年間、中国企業の海外上場株（中概株）に見られた評価差は、中国インターネット関連企業の資産価値再評価によって、徐々に解消されると予想されています。米国の同業社と比較して、中国の優良インターネット企業の業績成長には大きな差がないものの、一般的に明らかな過小評価が見られます。スイスのUBSが2月12日に発表した報告書によると：
- XiaomiはTeslaと比較して評価がマイナス80％
- 中興通信（ZTE）はCiscoと比較して評価がマイナス68％
- アリババはAmazonと比較して評価がマイナス51％
- テンセントはMetaと比較して評価がマイナス45％
AI技術の進展は、価値の再評価を促進し、中国のインターネット企業に新たなチャンスをもたらすと期待されています。DeepSeekの低コストで高効率な技術が広がる中、中国国内では、動画、デリバリー、団体購入、eコマース、SNS、ゲームなどのさまざまな分野で、技術革新を活かして優位性を持つ企業が利益を得ることが期待されています。アリババ、テンセント、ピンドゥオドゥオ、美団（Meituan）などの注目されている中国企業は、それぞれの市場特性に応じたローカライズ戦略を展開することで、評価の基準が再編成されると予想されています。
さらに、最近行われた6年ぶりの大規模な民間企業の座談会は、政府が民間企業を力強く支援する意向を示し、中国の企業家たちの信頼感を大いに高める結果となりました。今回の座談会は、国家が民間企業への強力な支援を示すだけでなく、中国資産のさらなる評価向上を促し、外資が中国の民間企業に対する従来の印象を改善するだけでなく、中国資産の評価をさらに押し上げて投資家の信頼感を高める重要なきっかけとなると考えられます。
これは中国ハイテク資産の再評価の始まりに過ぎません。
株式投資の変化 : アメリカから中国への構造的な転換
2025年には、中国企業のグローバル化が進むことで「割安評価」が徐々に解消され、逆に「プレミアム評価」へと転じる可能性があります。今後数年の間は、国際投資家が中国資産の配分を加速させると予想され、A株と香港株は上昇トレンドを継続するでしょう。これによって市場が安定し、政策の後押しが続く中で、世界的な資本が中国資産に対する信頼を高め、それが中国株市場のさらなる上昇を促すでしょう。
現在の株式市場の投資方針は、米国市場から中国市場への構造的な転換を反映しています。このトレンドを把握することは、投資家が今後のグローバルな資本配分の機会を捉え、長期的で安定した成長を実現するのに役立つでしょう。
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